ラーディックスの底

本と映画の感想、創作小説、ときどき絵

今年も雉がやってきた

 

 ここのところめちゃくちゃ忙しく、仕事から帰ると風呂入って、メシ食って、寝るという生活です。

 ひと月ほど前の話ですが、休みの日も朝ごはんを食べ終わると、でーんと横になって死んだ目でテレビを眺めることしかできず、季節の変化もなんとなく寒くなって面倒だな、という鈍さで生きていました。

 換気のために開けていた窓から、ケッ! ケッ! と鳥の鳴き声。そして、ああ今年も雉がやってきたんだな、と思いました。

 この場所に引っ越してきて数年、田舎の住宅街、多少の自然はあるものの、なんでここに? と毎年思いながら、ついには秋を感じる声になりました。

 調べてみると、秋は繁殖期ではないようなのですが、彼らは秋にやって来て春まで鳴きます。一番驚いたのは鳴き方がまるで違うことでした。

 初めて聞こえてきた声は「ケーン! ケーン!」とよく文字で見るように鳴いていました。おや、と思って調べてみると、思った通りの雉で感動したものです。

 次の秋聞こえてきたのは、「ケ、ケーン! ……ケ、ケーン!」と、どこか拙い感じ。ベランダから外を見てみると、居たのは雉。てくてくと歩いていました。そして、同じように何度も鳴いていました。そこで、鳴き声の練習しているのかな、と思いました。巣作りを練習する鳥がいたような覚えがあり、きっと雉も鳴き方を練習するのだろう、とベランダから引っ込んだのですが、結局最後まで上手くなることはなく。

 次の年は「ゲケェー! ゲケェー!」と鳴く子が来て、あの鳴き方は個性なんだ! と驚きました。毎年鳴き声が変わるので、個性的な鳴き声でもお相手が見つかっていることをなんとなく嬉しく思いながら、今年の子も車に引かれることなく、無事に冬を越し、お相手が見つかることを願っています。